0章 お姫様に憧れたお姫様

 女の子は誰でも、お姫様に憧れるものだと思う。
 少なくとも私はずっと憧れていて、小さい頃はフリルのたくさん付いた「お姫様の服」を着たがっていた。
 まあ、えてしてそういう服は高いものだから、テストをがんばったご褒美に買ってもらおうと、たくさん勉強をして、そしていざ買ってもらえれば、外に着ていくのは汚してしまいそうで怖いので、おばあちゃんに買ってもらった姿見の前で、たった一人のお姫様のファッションショーを開いていた。
 だけれど、時間の流れと、「女の子」の発育の早さは残酷なもので、瞬く間に私の身長は伸びていって、十二歳にして大人顔負け……いや、成人女性の平均身長を超える身長を手に入れてしまっていて、見た目だけなら「少女」を飛ばして、「女性」になってしまっていた。
 そんな体になってしまえば、もうお姫様の姿をしている訳にもいかない。小さな女の子向けの服は着れなくなったし、大人のロリータ服を買うには値段が高すぎて、私はもう自分自身がお姫様になるという願望を捨ててしまうようになっていた。
 身長と一緒に胸も出てきて、友達は一足お先に大人になってしまった私を羨ましがったけど、私はこうはなりたくなかった。
 これではまるで、お姫様をいじめる意地悪な女王様みたいだ。
 現実と理想の大きなギャップは、悲しみよりも、もっと無情な……虚無感にも似た感情を芽生えさせていた。
 それから、更に時間は流れて――

「姫!アイリたんの服のボタンがはじけ飛んでしまったのですが!」
「姫!俺の夏美の髪型が決まらないんですけど、なんとかなります!?」
「姫!喉乾いたんで、ジュース買ってきますよ、何がいいですか?」
「姫!」
「姫!」
『姫!!!』

「おまんら、ちょっと静かにせんかい!こちとら、アンニュイな表情で物思いに耽ってるのがわからんのか!?」

 私は、オタサーの姫になっていた。
 念願のお姫様だぞ、喜べよ。

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